二、被疑者の権利
次のページ・・・三、被告人の権利
1つ前のページ・・・一、基本原則
二、被疑者の権利
1 逮捕・抑留・拘禁からの自由 |
明治憲法下では治安維持法をはじめとして人々を弾圧する法律がたくさんありました。
しかし立憲主義国家はそうした不正を許しません。
国家権力が人々にとって最も恐ろしい形として現れるのは逮捕や刑罰を行なうときです。
そのため国家権力から人々を守ることを目的とする憲法は、とくに刑事手続について詳細な規定を定めました。
33~39条に刑事手続の規定が定められています。
本当だ!33~38条にわたってすごく詳細に規定しているね。他の、例えば学問の自由だったら文言が「学問の自由はこれを保障する」で終わってるのにね。刑事手続規定はそれだけ細かく規定する必要があるんだね。
憲法33~35条で捜査における被疑者の権利として、不法な逮捕・抑留・拘禁からの自由と、住居の不可侵とを定めています。
それぞれ説明します。
被疑者とは犯罪の疑いを受け、捜査の対象とされているけれど、まだ公訴を提起されていない者をいいます。
不法な逮捕からの自由の保障として、33条は逮捕等の身体拘束には、原則として司法官憲(裁判官)の発する令状(逮捕状、勾引状、勾留状)が必要であると規定しています(令状主義)。
不法な逮捕からの自由の保障として、原則として司法官憲(裁判官)の発する令状(逮捕状、勾引状、勾留状)が必要であるとしている(令状主義)。 |
原則の令状主義の例外として、現行犯逮捕がある。 |
令状主義は司法官憲(裁判官)のチェックを設けることで、恣意的な人身の自由の侵害を阻止するのが目的です。
もし同じ機関である行政が令状を発することができてしまったら、いくらでも都合の良いように令状を発してしまいがちです。
したがって司法権(裁判所)がチェックした令状を発するようにしています。
令状主義の目的:司法権(裁判所)のチェックを設けることで、恣意的な人身の自由の侵害を阻止する。 |
もし、同じ機関である行政が令状を発することができてしまったら、いくらでも都合の良いように令状を発してしまいがち。 |
続いて不法な抑留・拘禁についてです。憲法34条では抑留又は拘禁についての手続的な保障を規定しています。
身体を一時的に拘束することを抑留、継続的に拘束することを拘禁といいます。
理由を告げずに抑留・拘禁してはいけません、
弁護人に依頼する権利を与えなければ、抑留・拘禁してはいけません、ということを意味しています。
理由を告げずに抑留・拘禁してはならない。 |
弁護人に依頼する権利を与えなければ、抑留・拘禁してはならない。 |
2 住居の不可侵 |
住居の不可侵についてです。
住居は人の私生活の中心です。
プライバシー保護の観点から令状主義が規定されました(一般令状の禁止)。
例外として33条の場合には無令状で住居への侵入を行なうことが許されます。
33条の場合とは現行犯逮捕と令状逮捕の2つの場合のことです(本章二1(一)参照)。
令状なしで住居への侵入をしてはならない。 |
一般令状とは、どこで何を捜索・押収するか特定していない令状です。一般令状だと、いつでもどこでも捜索・押収できるので、濫用される恐れがあります。したがって一般令状を禁止しています。
第2部 第11章 人身の自由 二、被疑者の権利 おしまい
次のページ・・・三、被告人の権利
1つ前のページ・・・一、基本原則