一、参政権
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一、参政権
本章(13章)では、その他の人権である参政権や受益権について説明します。
1 参政権の意義 |
国民は、主権者です。
したがって政治に参加する権利があります。
具体的には、国民には
国会議員を選挙したり議員に立候補したりする権利(15条)、
国民投票に参加する権利、(97条2項、96条、95条)、
公務員になる権利、
があります。
国会議員を選挙したり、議員に立候補したりする権利 |
国民投票に参加する権利 |
公務員になる権利 |
2 選挙権の法的性格 |
さまざまな参政権のうちでももっとも重要なものが議員を選挙する選挙権です。文字通り選挙をする権利です。
選挙ってたまにめんどくさいときもあるよね…。やっぱり選挙って行かなきゃだダメなもの?
選挙に行く・行かないの問題は、選挙権が権利か義務か、という法的性格の問題でもあります。
法的性質について考え方には権利説と公務説の争いがあります。
権利説は、選挙権は国政への参加を国民に保障する権利と考えます。
権利ですので、放棄できるという考えに結びつきやすいです。選挙をしてもしなくても良い、と考えます。
公務説は、選挙人としての地位に基づいて、公務員の選挙に関与する公の職務を執行する義務と考えます。
公務ですので、放棄できないという考えと結びつきやすいです。選挙をするのは公務だから選挙をしなければならない、と考えます。
通説は二元説です。二元説とは、選挙権は権利と公務の両者の性格を有しているというものです。
3 選挙権の要件 |
選挙権は5つの原則をもっています。
①普通選挙
②平等選挙
③自由選挙
④秘密選挙
⑤直接選挙
以上5つです。
これらはいずれも、選挙の自由・公正と効果的な代表を実現するために、大切な要件です。とくに、①と②が大切です。
まず①普通選挙は、一般に財力・教育・性別などを選挙権の要件としない制度をいいます。
なぜこんな原則があるの?当たり前のことじゃん?
昔は当たり前ではありませんでした。
明治憲法下で1889年に初めての選挙の選挙法が制定されましたが、選挙権をもつのは一定額以上納税している男子に限られていました(制限選挙)。
1925年に納税要件はなくなりましたが、25歳以上の男子と決められていました。
1945年になって、ようやく現在のように、20歳以上の国民すべてに選挙権が認められるようになりました。
初めて行なわれた選挙は年齢・納税額・性別要件があった。 |
現在は、年齢要件(20歳以上)さえ満たせば誰でも選挙権がある。 |
憲法44条では、選挙権のみならず被選挙権についての資格の平等を定めています。
被選挙権とは、選挙される人つまり、候補者になる権利のことです。
被選挙権についても、財力や性別が要件とされることはありません。
選挙人の資格の平等(44条) |
第7章 包括的基本権と法の下の平等二、法の下の平等 の2.憲法における平等原則のところでも、学習しましたね。
次は②平等選挙です。
平等原則とは、一人一票を原則とする制度のことです。
日本国憲法は、複数選挙や、等級選挙を否定しています。
お金持ちの人は2票とかできないわけね。
その通りです。そしてそのようにかつては平等選挙とは、選挙権の数的平等の原則のことをいいました。
しかし現在では、平等選挙とは、投票の価値的平等の要請をも含むと解されています。
具体的に問題となるのは、議員定数の不均衡の問題です。
地域による議員定数不均衡問題は法の下の平等に反するのではないか、という争いがありましたね(第7章 包括的基本権と法の下の平等 二、法の下の平等)。
本章(13章)では、その他の人権である参政権や受益権について説明します。
③自由選挙とは、棄権しても罰金、公民権停止、氏名公表などの制裁を受けない制度をいいます。
本章(13章)では、その他の人権である参政権や受益権について説明します。
④秘密選挙とは、誰に投票したかを秘密にする制度をいいます。
本章(13章)では、その他の人権である参政権や受益権について説明します。
最後に、⑤直接選挙とは、選挙人が公務員を直接に選挙する制度をいいます。
選挙権はいろいろな原則を含んでいます。
しかし、どれも選挙の自由・公正と効果的な代表を実現するためにはどんな制度が最適だろうか、と考えた結果うまれてきた原則です。
理想的な選挙制度とはどんなものか、議員定数不均衡の問題(第7章 包括的基本権と法の下の平等 二、法の下の平等)も含めて考えてみると、日頃のニュースも興味深く面白いものになり、記憶が定着しやすくなりますよ。
第2部 第12章 その他の人権 一、参政権 おしまい
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