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三、天皇制
1 国民主権と天皇制 |
繰り返しになりますが、日本国憲法は国民主権主義を採用しています。
しかし、GHQの意向もあって天皇制は象徴天皇制という形で残されています。
明治憲法においての天皇制と、日本国憲法においての天皇制は、大きく異なります。
天皇主権 主権者:天皇 |
国民主権 主権者:国民 |
日本国憲法では天皇を日本の象徴としています。
象徴とは、鳩は平和の象徴だ、百合の花は純潔の象徴だ、等と言うのと同じ意味です。
鳩=平和 |
百合の花=純潔 |
天皇の地位の根拠も変わりました。明治憲法において天皇は神様のお告げに基づくものとされていました。
しかし、日本国憲法において天皇は国民の総意に基づくものとされました。絶対不可侵のものではなくなったのです。
天皇の地位の根拠 |
明治憲法: 天皇の地位は神様のお告げに基づくもの |
日本国憲法: 天皇の地位は国民の総意に基づくもの |
このことは憲法1条で述べられています。
天皇の権能も大きく制限されました。明治憲法において天皇は統治権の総攬者とされていました。
しかし、日本国憲法において天皇は国政に関する権能を持たず、国事行為のみを行なう、とされていました。
ん?国事行為って何?
国事行為とは形式的・儀礼的な行為のことをいいます。国会の召集や栄典の授与等のことです。
これらは憲法7条で述べられています。こうした国事行為を行なうにあたって、天皇は内閣の助言と承認が必要とされています。
国事行為とは形式的・儀礼的な行為 |
国会の召集: 国会の議会開会のために一定期日に各議院に集会すべきことを命ずること。詔書の形で表示する。 |
栄典の授与:栄誉を表すために与えられる位階・勲章を授けること。 |
2 天皇の公的行為 |
天皇の行為には国事行為のほかに、読書したり研究したりと私的行為があります。
私的行為 |
読書 |
研究 |
うん。そりゃそうだよ。人間だからね。
しかし、実際には国事行為とも私的行為ともどちらとも言えない曖昧な行為もあります。
この曖昧な行為が国会開会式の「おことば」や視察等です。
国事行為とも私的行為とも言えない行為 |
国会開会式の「おことば」 |
視察 |
天皇を象徴として認めている以上、天皇の行為すべてが多かれ少なかれ公的な意味を持つことは否定できません。
したがって、天皇のおことばや視察等の行為を象徴としての地位に基づくもの、と考える説(象徴行為説)が通説です。
他にも天皇のおことばや視察等の行為は公人としての当然の儀礼的行為である、と考える説(公人行為説)も有力説です。
通説とは、ひろく認められている説のことです。
有力説とは、ひろく認められてはいないものの、支持されている説のことです。
頻繁に出てくる言葉ですので、しっかり覚えてくださいね。
3 皇室経費 |
日本国憲法においては天皇の財産・皇族の財産(皇室財産)は国に属することになりました。
つまり国の財産となりました。
国の財産は国会が予算を計上し議決がされます。
こうして天皇・皇族に過大に財産が集中しないように民主的なコントロールがされています(財政民主主義)。
国の財産は国会が予算を計上し議決がされる(財政民主主義) |
予算の議決について、詳しくは第3部統治機構
第14章 国会
第15章 内閣
で説明します。
第1部 第3章 国民主権の原理 三、天皇制 おしまい
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