第3部 第15章 内閣 二、内閣の組織と内閣の権能


一、行政権と内閣

二、内閣の組織と内閣の権能

三、議院内閣制


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二、内閣の組織と内閣の権能

1 内閣は合議体



内閣は内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織される合議体です。

合議体とはある事案について複数人が協議して意志決定を行う組織体のことです。

国務大臣は内閣総理大臣が任命します。総理大臣は国会議員でなければいけませんが、国務大臣は過半数が国会議員であればよいです。

内閣法により国務大臣の人数は原則14人以内、必要があれば17人以内、と定められています。

憲法

第66条  内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。

憲法

第68条  内閣総理大臣は、国務大臣を任命する。但し、その過半数は、国会議員の中から選ばれなければならない。





ケンくん
ケンくん

へぇー、それじゃ内閣の国務大臣は過半数が国会議員であればあとは一般人でも構わないの?例えば国務大臣14人中8人が国会議員であとは一般人、という内閣もありうるの?

国務大臣14人中8人が国会議員であとは一般人、という構成の内閣



その通りです。国会議員が過半数であるという要件さえ満たしていれば問題ありません。
一般人でも国務大臣になることは可能です。
しかし実際には国務大臣のほとんどが国会議員で、一般人が任命されることはほとんどありません。


2 内閣の構成員は文民であること



内閣の構成員の要件は2つあります。

①内閣総理大臣と国務大臣の過半数は国会議員であること、
②文民であること、

です。

①については先ほど述べましたので、②について説明します。

②の文民であることが要件となっている趣旨は文民統制シビリアンコントロール)の原則を徹底させるためです。

文民とは政府見解によると職業軍人の経歴があり軍国主義思想に深く染まっている者や自衛官の職にある者以外の者をいいます。
こうした文民を内閣の構成員とすることで、軍の独走を抑止しているのです。

憲法

第66条
2項  内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。






3 内閣総理大臣とは



内閣総理大臣は国会議員の中から国会の議決で指名し、天皇が任命します(67条・6条)。

内閣総理大臣は内閣という合議体の首長、つまりヘッドとされています(66条1項)。

明治憲法下ではただ単に「同輩中の主席」という位置づけで他の国務大臣の対等の関係でした。

見出し

第67条  内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する。この指名は、他のすべての案件に先だつて、これを行ふ。

見出し

第66条  内閣は、法律の定めるところにより、その首長たる内閣総理大臣及びその他の国務大臣でこれを組織する。

見出し

第6条  天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。





ケンくん
ケンくん

簡単に言うと、内閣総理大臣は他の国務大臣より、おエライさんなんだね。
おエライさんである内閣総理大臣には、どんな権限があるの?




内閣総理大臣の権限として

①国務大臣の任免権(任命権と罷免権)、
②内閣の代表権、代表して議案を国会に提出する等の権限、
③法律、政令に連署、

などがあります。


このように内閣総理大臣は国務大臣より地位が高く、様々な権限が与えられています。

内閣総理大臣の地位と権限が強化された理由は、内閣の一体性・統一性を確保し、内閣の国会に対する連帯責任の強化を図るためです。


4 内閣の権能と内閣の責任



内閣の権能として、内閣は行政権の中枢として広い範囲にわたって行政権を行使しています(第15章 内閣一、行政権と内閣)。

その主なものは憲法73条で定められています。内閣は閣議によってこれらの職権を行ないます。

憲法73条で定められている内閣の権能

法律の誠実な執行と国務の総理内閣は、自らが違憲と判断する法律をも執行する義務がある。内閣には、違憲審査権がないからである。
外交関係の処理条約締結以外の外交事務も内閣が処理する。
条約の締結内閣が条約を締結する。ただし、国会の承認が必要である。
官吏に関する事務の掌理国の行政権の活動に従事する公務員の人事行政事務を行う。
予算の作成と国会への提出内閣が予算を作成・提出するが、国会の審議・議決が必要である。
政令の制定行政機関が制定する命令のうち、政令は内閣が制定する。ただし、政令には、特に法律の委任がある場合を除いて、罰則を設けることができない。民主的コントロールのためである。
恩赦の決定恩赦には、天皇の認証も必要とされる(7条6号)


内閣の責任として、内閣は行政権全般について国会に連帯して責任を負います(66条3項)。

内閣が行政権全般について、国会に対し連帯責任を負うことにより民主的責任政治の実現を図る趣旨で定められています。

憲法

第66条
3項  内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。


ゴッツ先生の解説
ゴッツ先生の解説

民主的責任政治とは、国会と内閣を強く結びつけることで 国民ー国会ー内閣、という民主的コントロールを強化している政治のことです。詳しくは、第15章 内閣 三、議院内閣制で学びます。


5 総辞職



内閣はいつでも総辞職することができます。

但し、内閣不信任決議がされたとき、総理大臣の欠缼(けんけつ)があったとき、衆議院議員総選挙のとき、には必ず総辞職しなければなりません

なお、総辞職した内閣は、あらたに内閣総理大臣が任命されるまでは引き続き職務を行なうことができます。

内閣不信任決議衆議院で内閣不信任が決議されたときに、10日以内に衆議院が解散されない場合(69条)
総理大臣の欠缼(けんけつ)内閣総理大臣が(死亡、辞職などで)欠けた場合(70条)
衆議院議員総選挙衆議院議員総選挙の後に始めて国会の召集があった場合(70条)

ケンくんノート

【まとめ】
第3部 統治機構
第15章 内閣
二、内閣の組織と内閣の権能

1、内閣は内閣総理大臣とその他の国務大臣で組織される合議体である。

2、 内閣の構成員の要件として

①内閣総理大臣と国務大臣の過半数は国会議員であること、
文民であること、

の2つがある。

3、内閣総理大臣は内閣という合議体の首長とされている(66条1項)。内閣総理大臣の権限として、国務大臣の任免権(68条)、内閣の代表権(72条)、法律・政令の署名および連署(74条)、国務大臣の訴追に対する同意権(75条)、議院出席権(63条)、が認められている。

4、
内閣の権能は憲法73条で定められている(表あり)。
内閣の責任は行政権全般について国会に連帯して責任を負う(66条3項)。

5、内閣はいつでも総辞職することができる。
但し、内閣不信任決議がされたとき、総理大臣の欠けつがあったとき、衆議院議員総選挙のとき、には必ず総辞職しなければならない。


第3部 第15章 内閣 二、内閣の組織と内閣の権能 おしまい

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