三、労働基本権
次のページ・・・第13章一、参政権
1つ前のページ・・・二、教育を受ける権利
三、労働基本権
1 労働基本権の内容 |
社会権の最後は労働基本権です。憲法27条は勤労の権利の保障を規定しています。
勤労が国民の義務であると宣言し、かつ28条で労働基本権の保障を規定しています。
憲法でいう「勤労者」とは「労働者」と同じ意味です。労働者とは、労働力を提供して対価を得て生活する者のことです。
第6章 基本的人権の限界二、特別な法律関係における人権の限界では、特別権力関係論のもとでは、公務員の労働基本権は制約される、という説明でした。
公務員と違って、一般の労働者には労働基本権が保障されます。
労働基本権は三つの権利でした。団結権、団体交渉権、団体行動権、です。
三つあるから労働三権ともいいます。
①団結権とは、労働者の団体を組織する権利です。
②団体交渉権とは、労働者の団体が使用者と労働交渉する権利です。
③団体行動権とは、労働者の団体が、団体行動をする権利です。つまり、ストライキする権利です。争議権ともいいます。
労働基本権 | ①団結権:労働者が、団体を組織する権利。 | ||||
②団体交渉権:労働者の団体が、使用者と交渉する権利。 | |||||
③団体行動権(争議権):労働者の団体が、労働条件実現のため団体行動する権利 (ストライキする権利)。 | |||||
2 労働基本権の法的性格 |
労働基本権の法的性格は社会権的側面と自由権的側面の、複合的性格を有しています。
国に対し労働者の労働基本権を保障する措置を要求し、国はその責務を負います(社会権的側面)。
それを制限するような立法その他の国家行為を国に対して禁止しています(自由権的側面)。
労働基本権は、使用者対労働者という関係において、労働者の権利を保護することを目的としています。使用者は労働者の労働基本権を尊重する義務を負います。つまり、労働基本権の保障は、私人間にも直接適用されます。
この労働基本権の保障の趣旨は何でしょう。
労働基本権の趣旨は労使の対等を実現することです。
労使の対等を図るために、経済的弱者である労働者を保護しよう、という考え方に基づいています。
例えば労働者と使用者に完全に自由な契約ができたとします。
すると労働者は弱い立場にありますから、安い賃金で働かされてしまいます。
労働者は賃金が安いことを使用者に不満を述べようものなら「そんなことを言うならキミはクビだ。キミの代わりなんていくらでもいるんだ」、と言われてしまいます。
使用者は賃金だけでなく、労働時間など労働に関する条件を全て好きなように決めてしまうことができます。
それでも労働者は文句を言うことができません。
こうしたこと防ぐために、労働者に使用者と対等な関係を持たせます。
そのための労働者に持たせる武器が団結権、団体交渉権、団体行動権、といった労働基本権なのです。
労働基本権の趣旨は労使の対等を実現すること。経済的弱者である労働者を保護するため、労働者に労働基本権(団結権、団体交渉権、団体行動権)という武器を持たせる。 |
第2部 第12章 社会権 三、労働基本権 おしまい
次のページ・・・第13章一、参政権
1つ前のページ・・・二、教育を受ける権利