一、思想・良心の自由
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一、思想・良心の自由
本章(8章)と次章(9章)では、自由権に分類される精神的自由権について説明します。
自由権:国家からの自由 |
1 精神的自由の基本をなす自由 |
憲法19条では思想・良心の自由の保障を規定しています。
思想・良心の自由は、内面的精神活動のなかでも最も根本的なものです。
諸外国の憲法では思想・良心の自由は当然に絶対的なものだと考えれているため、わざわざ規定せずに表現の自由を保障すれば十分である、と考えているほどです。
ではなぜ日本国憲法では、わざわざ思想・良心の自由を規定しているのでしょうか。
なぜなら、明治憲法下では、特定の思想を反国家的なものとして弾圧していた歴史的背景があったからです。
明治憲法下では、思想・良心の自由が保障されていませんでした。
特定の思想を持つ者を処罰したり、不利益を与えたりすることがしばしば行なわれました。
こうした歴史的背景から日本国憲法では、思想・良心の自由を保障を明確に規定しているのです。
明治憲法下では、特定の思想を持つ者を処罰したり、不利益を与えたりすることがしばしば行なわれた。 |
うわー、怖いなぁー。思想・良心の自由はとっても大事だね。
2 思想・良心の自由の保障の意味 |
思想・良心の自由は思想と良心を二つに分けて書いてありますが、特に区別はない、とするのが判例・通説です。
諸外国の憲法では良心の自由というと信仰の自由を意味しています。
しかし、日本国憲法では信仰の自由は20条で保障されています。
思想・良心の自由の保障の意味は2つあります。
1つ目は内心の思想にとどまっていれば、絶対的な自由が保障されることです。
極端なことを言えば、過激で危ない考えを持っていても構わないということです。
民主主義を否定する考えでも構いません。
思想・良心の自由の保障の意味1つ目:内心の思想にとどまっていれば、絶対的な自由が保障される。 |
2つ目は、思想を訊ねることが許されないことがあります。
明治憲法下では、どんな思想を持っているか問いただされたことがありました。
思想・良心の自由の保障の意味2つ目:思想を訊ねることが許されない。 |
思想・良心の自由の侵害が争われた事件として、謝罪広告強制事件があります。
謝罪広告強制事件(最大判昭和31・7・4) |
謝罪広告強制事件は選挙の際、他の候補者の名誉を毀損した候補者が、裁判所から謝罪広告を命じる判決を受けたことを、思想・良心の自由の保障に反する、として争った事件です。
判例は、謝罪広告であっても単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明するにとどまる程度の謝罪広告であれば、掲載するよう命ずる判決は合憲である、としました。
第2部 第8章 精神的自由権1-内心の自由- 一、思想・良心の自由 おしまい
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