第2部 第5章 基本的人権の原理 三、人権の内容


一、人権宣言の歴史

二、人権の観念

三、人権の内容

四、人権の享有主体


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三、人権の内容

1 人権の分類
ケンくん
ケンくん

人権がどんなものかはボヤ~ンとイメージできたけど、具体的にどんなものか内容はまだわからないなぁ~。



そうですね。人権、と一言で言っても様々な種類のものがあります。それぞれ説明していきます。

人権は自由権
社会権その他の人権、に大きく分けることができます。

すべての権利に関わっているのが包括的基本権です。

自由権とは、国家が個人に介入することを排除して、個人の自由を保障する権利です。
国家の不作為を求める権利です。不作為とは、「何もしないこと」です。
つまり国家に「何もしないでくれ」と求める権利です。そうした意味で自由権は国家からの自由ともいわれている権利です。

さらに自由権の内容は精神的自由権、経済的自由権、人身の自由、に分けられます。

社会権とは、社会的・経済的弱者が人間らしい生活ができるように国家の積極的な介入を求める権利です。
国家の作為を求める権利です。作為とは「何かをすること」です。

つまり国家に「何かをしてくれ」と求める権利です。そうした意味で社会権は国家による自由ともいわれている権利です。

自由権(国家からの自由)
国家が個人に介入することを排除して、個人の自由を保障する権利。
社会権(国家による自由)
社会的・経済的弱者が、人間らしい生活ができるように国家の積極的な介入を求める権利。
ケンくん
ケンくん

ハァ~、やっと人権の分類終わった~。



おつかれさま。ではケンくんのノートに少し書き加えます。
人権の分類をまとめると、このようになります。


ケンくん
ケンくん

うわ~!知らない言葉がいっぱい書き加えられたなぁ~!全然わかんないや~!



今の段階ではわからなくて結構です。これから順次説明していきます。
だいたいこんな感じの分類があるんだな、くらいの軽い気持ちでとらえてください。

ゴッツ先生の解説
ゴッツ先生の解説

分類のしかたは他にもたくさんあります。

2 分類の相対性



この人権の分類について特に注意してほしいことが2つあります。

1つ目は人権の分類の体系を絶対的なものとしてとらえてはならない、ということです。
2つ目は国家からの自由の思想が基本とされなければならない、ということです。

ケンくん
ケンくん

どういうこと?



まず1つ目の人類の分類の体系を絶対的なものとしてとらえてはならない、とはどういうことかを説明します。

例えば、自由権である表現の自由のなかには知る権利という権利があります。
この知る権利には「情報を受ける権利」のほかに「情報の公開を請求する権利」のような社会権としての性格も持っています。

つまり知る権利は自由権的側面社会権的側面を持っているのです。

知る権利の自由権的側面
知る権利の社会権的側面



他にも分類するのが難しい権利がたくさんあって厳格に分類することは不適当です。
大切なことはそれぞれの問題に応じて権利の性質を柔軟に考えていくことなのです。

ゴッツ先生の解説
ゴッツ先生の解説

相対とは絶対の対義語です。人権の分類は絶対的なものではなく、相対的なものなんだよ、というお話でした。



2つ目は国家からの自由の思想が基本とされなければならない、ということです。このことについて説明します。

ケンくん
ケンくん

「国家からの自由」というと、自由権のことだね。自由権の思想を基本にするんだね。



その通りです。自由権は消極国家、社会権は積極国家という考え方になります。
したがって社会権を過大に重視してしまうと。自由権の領域まで国家が介入することを認めてしまう、ということになります。
個人の自律を第一に考えて、国家からの自由の思想を基本としなければなりません。

ケンくん
ケンくん

なるほど。あくまでメインが自由権で、サブが社会権、ってことだね。




3 制度的保障



人権は個人の権利・自由を保障する規定だけでなく、制度的保障もしています。

制度的保障とは、立法(法律を作ること)によっても人権の本質的内容を侵害されないよう、特別の保護を与えていることをいいます。

制度的保障



人権の制度的保障について関連する判例もあります。津地鎮祭事件という事件です。

詳しくは第8章 精神的自由権1-内心の自由- 二、信教の自由で説明します。

津地鎮祭事件では、地鎮祭でお払いをした神主さんへの謝礼やお供え物に、公金が使われたことが政教分離原則に反するのではないか、と争われました。

津地鎮祭事件(最大判昭52・7・13)



この津地鎮祭事件では要点が3つです。

政教分離原則の性格が制度的保障である、とされたこと。
②国と宗教の分離の程度は相対分離である、とされたこと。
③宗教的活動の判断は目的・効果基準論である、とされたこと。

です。②と③については詳細を第8章 精神的自由権1-内心の自由- 二、信教の自由で説明します。ここでは①についてだけ考えましょう。

政教分離原則とは国家から特権を受ける宗教を禁止して、国家の宗教的中立性を確立する原則のことです。
国家からひいきされる宗教があってはならない、という考え方です。

この政教分離原則が制度的保障として保障され、間接的に信教の自由(人権)を確保しているのです。

制度的保障
ゴッツ先生の解説
ゴッツ先生の解説

ここではピンと来なくても大丈夫です。第8章 精神的自由権1-内心の自由- 二、信教の自由を読んだときに、このページに戻ってくれば理解が深まります。


ケンくんノート

【まとめ】
第2部 基本的人権の尊重
第5章 基本的人権の原理
三、人権の内容

1、人権は大きく分けて自由権社会権、その他の人権に分けられる。
  自由権=国家からの自由、
  社会権=国家による自由、である。

2、人権の分類は絶対的なものではなく相対的なものである。
  本質を考えるときは自由権(国家からの自由)の思想を基本として考えることが大事。

3、人権は制度的保障がされている。例として信教の自由は政教分離原則という
  制度的保障によって、間接的に信教の自由(人権)を確保している。


第2部 第5章 基本的人権の原理 二、人権の観念 おしまい

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